戒能洋一教授(生環系)の研究チームは、農業・食品産業技術総合研究機構の霜田政美さんらとの共同研究で、光で害虫の天敵となる昆虫を集め、害虫を駆除する技術を開発した。近年、殺虫剤への耐性を持つ害虫が増えており、打開策として期待できそうだ。
害虫の天敵となる昆虫を天敵昆虫と呼ぶが、これを利用した駆除法は以前から考えられていた。一つは人工的に飼育した天敵昆虫を農地に放す方法だが、天敵昆虫の飼育に莫大な人件費がかかるため実用性が低かった。
もう一つは、農作物の周囲に天敵昆虫が好む植物を植え、天敵昆虫を呼び寄せる方法。前者に比べ経費がかからない一方で、天敵昆虫が植物から農作物へなかなか移動しない難点があった。
この問題を解決したのが戒能教授らの研究だ。研究の対象はナスの害虫・アザミウマとその天敵昆虫・ナミヒメハナカメムシ。アザミウマは針状の口でナスに傷をつけるため、ナスの表面がただれてしまい、商品価値が下がってしまう。
戒能教授らはまず、光に集まる虫の習性(走光性)に着目。天敵昆虫のナミヒメハナカメムシが紫色の光の波長を好むことを突き止めた上で、この天敵昆虫が最も活発に動く夕方の3時間ほど、害虫の付いたナスの上から紫色の光を照射した。その結果、ナスの周囲に植えた植物からナスに移動した天敵昆虫の数は、無照射のナスの10倍となり、害虫のアザミウマの数も60%減少した。
現在、研究は実用化に向けて動き出しており、紫色照射の特許を申請すると共に、企業と提携して光源の製品化を進めている。農薬を使わずに多くの害虫を駆除できるため、減農薬栽培への活用も期待できる。
戒能教授は「この研究で、より安全に害虫を駆除できるようになったのではないか」と話し、「コ
ストもライトの購入費と電気代だけで済む」と語っている。(石川泰行=社会学類2年)
天敵昆虫が好む植物で近くに呼び集めた天敵昆虫を作
物に移す仕組み=戒能教授提供