肺がんの化学放射線療法

肺がんの化学放射線療法

2016年4月10日 at 5:06 PM

化学放射線療法とは?

最初に症例を呈示します。この患者さんは55歳女性の方で、右肺腺がんの他に糖尿病、高脂血症、不整脈をお持ちでした。
胸部CTでは肺がんが縦隔リンパ節転移を起こし、さらに肺動脈、上大静脈、気管に浸潤しているため、手術が出来ない状況でした。(図1)
 
筑波大学 医学医療系 腫瘍内科
教授 関根 郁夫 先生
化学放射線療法で治療し、10年後の写真ですが、僅かに瘢痕を残して治癒しています。このように、手術が出来ない肺がん患者さんでも、胸水や他の臓器への転移が無ければ、およそ2割から3割の患者さんは化学放射線療法によって治癒に導くことが出来ます。(図2)
 
化学放射線療法というのは、化学療法と放射線療法を同時に行う治療法です。この治療が適応となるのは、局所進行肺がんの場合で、肺がん全体のおよそ15%を占めています。(図3)
 

局所進行肺がん

がんが原発巣とその周囲にしか見つかりませんが、大きくて周囲臓器に浸潤しているために、手術で取り除くことが出来ない状態です。さらに、目に見えない小さながん細胞は全身に広がっていると考えられています。

そこで、原発巣とその周囲にある大きながんの塊は放射線療法で治療し、目に見えない全身に飛んだがん細胞は化学療法で叩くという方法が考え出されました。

放射線による「単独療法」対「化学療法」と、放射線療法による継続併用療法の比較試験では継続併用療法の方がより効果的で(図4)継続併用療法と同時併用療法の比較試験では同時併用療法の方がさらによい成績でした。
この化学療法と放射線療法の同時併用療法のことを「化学放射線療法」と言います。(図5)

 

化学放射線療法の治療

 

筑波大学 医学医療系 腫瘍内科
教授 関根 郁夫 先生

化学放射線療法はどのような患者さんに適しているかというと、局所進行肺がんであるということと、症状が無くて日常活動性が保たれているという2つの条件に合った患者さんです。(図6)

化学放射線療法による治療方法

非小細胞肺がんの場合と小細胞肺がんの場合では多少違いがあります。(図7)

非小細胞肺がんの場合には、放射線療法は1日1回、月曜日から金曜日まで毎日、6週間行います。化学療法は4コース施行します。小細胞肺がんの場合には、放射線療法は1日2回、月曜日から金曜日まで毎日、3週間行います。化学療法は4コース施行します。

効果ですが、がんの大きさが半分以下になる患者さんの割合をみると、非小細胞肺がん、小細胞肺がんともにおよそ8割から9割です。

化学療法の副作用

化学療法の副作用は時期によって変わります。(図8)
最初の1週間は、吐き気、食欲不振、便秘などが出ることがありますが、吐き気止めや下剤でコントロールすることが出来ます。次の1週間は白血球や血小板が少なくなってくる時期で、熱が出ることもあります。

放射線療法の副作用は、最初はほとんど出ませんが、回数が重なってくると、飲み込むときに痛みを感じたり、放射線が当たっている範囲の皮膚が赤くなったりします。

これらの副作用は個人差が大きくて、あまり副作用が出ない患者さんもいますし、ひどい副作用が出る人もいます。最悪の場合には致命的になりますが、その頻度は3%程度ですので、97%の患者さんでは大丈夫ということです。

治療期間は4ヶ月ほどになりますが、入院が必要なのは、基本的に化学療法と放射線療法を行っている時期だけです。ただし、副作用が強い場合には長く入院する必要が出てきます。外来では、最初のうちは1-2週間に1日程度通院してもらいますが、そのうちに1ヶ月毎、3ヶ月毎、6ヶ月毎というように段々と通院の頻度が少なくなっていきます。

 

筑波大学 医学医療系 腫瘍内科
教授 関根 郁夫 先生

 
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日 付: 2016年4月10日
 

タグ: 肺がん, 関根郁夫先生