【病院とアート】患者図書室の空間デザインと壁画制作
2016年4月10日 at 5:16 PM
筑波大学
芸術系 教授(洋画)
仏山 輝美
芸術系 教授(洋画)
仏山 輝美
医療現場の環境改善ワークグループから出てきた議題の一つに、医療の説明責任をどのような形で果たすべきかというテーマがある。筑波大学附属病院では、病院内に図書室を設置し、誰もが気軽に医療書などを手にすることができる「患者図書室」をオープンした。内装デザインは貝島研究室が担当。また、フレスコ画の技法を応用した壁画を洋画(油絵)コースの仏山輝美教授が監修し、博士前期課程洋画領域の学生が中心となって描いていった。
貝島「近年、医療現場でどのようなことが行われているのかを解説する場を各病院が持つべきだという流れがあります。筑波大学附属病院でもそのような取り組みが始まりました。ただ、いきなり高度な図書館を作るわけにはいかないので、ちょうど建て替えのタイミングで一時的に空きスペースとなった旧病棟の病室を利用して「患者図書室」を作ろうというプロジェクトが立ち上がりました」
期間限定の実験的な取り組みとしてスタートした患者図書室プロジェクト。貝島先生率いるデザインチームは、どのように空間をデザインするかを検討していった。
貝島「下見をしに行ったところ、旧病棟の病室は窓に障子がはまっていて、柔らかい光が差し込む場所になっていました。それに合わせて木製のインテリアを提供することになりました。本の選書に関してはワーキンググループとボランティアの方々で進めていらっしゃったので、その本が入るように棚をデザインしたり、並べ方を検討していきます。また照明が通常の病室にある蛍光灯だったので、配線ダクトを入れてペンダント型のライトを設置しアクセントとしました。ひと通りデザインしたところで、壁が1面空きましたので、壁画を描こうという話しになりました。壁画については、漆喰を使ったフレスコ画のような技法を洋画コースの仏山先生が以前から研究していらっしゃいましたので、その技法を使って病院内にアートを描いていただくことを提案しました」
壁画はそれ自体が建物の一部でもあり、鑑賞者は同時にその場の生活者でもある。展示会場や受け手の関係性を前提とするメディアアートとは対極に位置する、純粋な自己表現である”ファインアート”を専攻する学生たちにとって、今回の制作経験は学びの場でもあったと仏山先生は語る。
筑波大学 芸術系 教授(洋画)
仏山 輝美
■患者図書室と森
患者図書室に描く絵を考えたとき、森という要望もありました。安易に人が森という要素をどうして求めるのか。なぜそれが安らぎになるのでしょうか。きっと我々はどんなに社会的身体を獲得しても、自然的身体をわすれることができないからではないでしょうか。自然的身体に向き合い、良い方向へ近づいていく。それが行われる病院は、森に似合うのかもしれません。(町田)
患者図書室に描く絵を考えたとき、森という要望もありました。安易に人が森という要素をどうして求めるのか。なぜそれが安らぎになるのでしょうか。きっと我々はどんなに社会的身体を獲得しても、自然的身体をわすれることができないからではないでしょうか。自然的身体に向き合い、良い方向へ近づいていく。それが行われる病院は、森に似合うのかもしれません。(町田)
壁画原作
町田 紗記(まちだ さき)
1992年生まれ、
筑波大学芸術専門学群卒業
壁画やインスタントタトゥなど既存のキャンバス・空間にとらわれない表現に興味を持つ。絵と人間の関係を思い、描くための身体、作家の行為性、身体が発してしまっている表現を見ている。現在、筑波大学附属病院患者図書室「桐の葉文庫」(茨城県)、平砂トンネル(茨城県)、社会福祉法人樫の木第4事業所(群馬県)にて壁画が公開されている。
町田 紗記(まちだ さき)
1992年生まれ、
筑波大学芸術専門学群卒業
壁画やインスタントタトゥなど既存のキャンバス・空間にとらわれない表現に興味を持つ。絵と人間の関係を思い、描くための身体、作家の行為性、身体が発してしまっている表現を見ている。現在、筑波大学附属病院患者図書室「桐の葉文庫」(茨城県)、平砂トンネル(茨城県)、社会福祉法人樫の木第4事業所(群馬県)にて壁画が公開されている。
壁画制作の様子
筑波大学 芸術系 教授(洋画)
仏山 輝美