世界初、宇宙空間でμgから1 gを可変できる実験環境”MARS”が完成〜月・火星に向けた国際宇宙探査へのステップとなる、「きぼう」における可変人工重力環境の研究プラットフォーム ”MARS”-Multiple Artificial-gravity Research System-の確立

代表者 : 濱田 理人  工藤 崇  高橋 智  

近年、国際的な宇宙探査の⽬的地として⽉、⽕星が候補となっていますが、有⼈宇宙⾶⾏、⻑期宇宙
滞在を可能とする技術だけではなく、宇宙環境(微⼩/低重⼒や放射線など)の⼈体への影響に関し
ては未知の科学的課題も多く残っています。そのため、⼈類の宇宙進出の科学基盤の確⽴を⽬指し、
「きぼう」を⽉・⽕星などに向けた有⼈探査へのテストベットとして活⽤して、国際宇宙探査へ科学的に貢
献することが求められてきました。
そこで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「きぼう」内に⼈⼯重⼒環境を発⽣させるターンテーブル
上で⼩動物(マウス)を飼育する装置を開発し、初回実験として微⼩重⼒環境(μg)および⼈⼯重
⼒環境(⼈⼯1 g)で同時⻑期飼育を⾏いました。筑波⼤学等と連携し、⻑期飼育したマウスの⾻・
筋⾁等の変化を分析したところ、μg で引き起こされたマウスの⾻・筋⾁の量の顕著な減少が⼈⼯1 g
では⾒られず、「重⼒が動物の⾝体そのものの形作りを決定づける」ことを純粋な重⼒影響のみの⽐較か
ら明らかにしました。今後、μg と1 g の間の重⼒環境(パーシャルg という)において、動物の⾝体の
形作りを決定づける重⼒閾値が⾒いだされることが期待され、宇宙探査にかかる科学⾯だけでなく、重
⼒のある地球上で動物が繁栄してきた道程が「きぼう」において紐解かれることも期待されます。
この成果は、英国の科学誌ネイチャー(Nature)の姉妹紙のオンラインジャーナル「サイエンティフィック
リポーツ(Scientific Reports)」で9 ⽉7 ⽇午前10 時(英国時間)に公開されました。