筑波大学生命環境系(山岳科学センター菅平高原実験所昆虫比較発生学研究室) 町田龍一郎 教授と福島大学大学院共生システム理工学研究科 真下雄太 日本学術振興会特別研究員-PDは、フタホシコオロギの卵から成虫にいたる全発生過程を、走査型電子顕微鏡を用いて詳細に検討しました。その結果、証拠立てが不十分だった側板の「亜基節起源説」(側板は肢の最基部節である亜基節に由来するという仮説)に、初の説得力のある形態学的証拠を提出しました。また、詳細な発生過程の追跡により、背板と肢の境界(背板‐肢境界BTA)を確定することに成功しました。
以上の結果から、翅の本体はBTAより背方の領域、すなわち背板の側方への拡張部である「側背板」に由来する一方で、翅の関節や翅を動かす筋肉はBTAより腹方の領域、つまり肢(最基部節である亜基節、すなわち側板)に由来することが示されました。その結果、翅の「二元起源説」が強く支持され、昆虫の翅の起源に関する長い論争に決着をつけることになりました。