2006 年の世界の時価総額ランキングのトップ5 は、1 位:エクソン・モービル 、2 位:ゼネラ
ル・エレクトリック 、3 位:マイクロソフト、4 位:シティグループ、5 位:BP であり、従来型
の巨大企業の中に既にベンチャー企業が登場している。そして17 年8 月、トップ5 は、1 位:アッ
プル、2 位:アルファベット、3 位:マイクロソフト、4 位:フェイスブック、5 位:アマゾンドッ
トコムというように、シリコンバレーの企業を中心に「ベンチャー企業」が上位を占めるに至って
いる。この20 年の間に、米国を中心に産業変革・社会変革が実現した事実は驚異的ともいえる。
このような産業変革・社会変革の立役者は「ベンチャー企業」。ベンチャー企業がイノベーショ
ンを推進して新市場・新産業の創出をけん引し、未来社会を築く主役としてやり抜いた。イノベー
ションとは、「新結合」「新しい切り口」「革新技術」などによって「社会的に意義のある新たな価値」
を創造し、新しい製品やサービスを生み出すことで産業変革・社会変革をもたらすことであり、革
新の担い手として「成し遂げる決意」を持った企業家(起業家)がリスクを乗り越えて新しい技術
や取り組みなどを経済サイクルに組み込む行為と密接に関わっている。
わが国においても、「イノベーション推進」を最重要課題として位置付け、日本を「世界で最も
イノベーションに適した国」とすべく、産官学が一体となって加速的に力を注いできた。その結
果、「大学発ベンチャー」創出への取り組みは着実に成果を出し始めている。人・ロボット・情報
系の融合複合新領域「サイバニクス」の創生に挑戦してきた筆者は、「科学技術は人や社会に役
立ってこそ意義がある」との思いで、04 年、サイバニクス技術の社会実装を実現するために筑波
大学発ベンチャー「CYBERDYNE(サイバーダイン)株式会社」を設立した。社会課題解決のた
めの革新技術開発、新産業創出、手探りで未来開拓に挑む人材育成を同時展開し、14 年3 月に東
証マザーズへの上場を達成した。現在、時価総額は3,100 億円。世界初のサイボーグ型ロボット
「HAL®」は欧州全域で医療機器の認証を取得し、日本では治験を終え、進行性神経筋難病への治
療効果が認められ医療保険の適用も始まった。2 年連続でトムソン・ロイター社から表彰、14 年
度に日本ベンチャー大賞(経済産業大臣賞)、16 年度には日本ベンチャー大賞(内閣総理大臣賞)
という栄誉を頂いた。
今、世界は「イノベーション・エコシステム」の競争モードに入ろうとしている。産官学での取
り組みは極めて重要で、社会的に失速させてはならないものも多い。社会変革をもたらすイノベー
ション推進のために、真に何が重要かを見据え、「産」は挑戦者としても協業者としても理念を持っ
て強いマインドで、「官」は大胆に、「学」は社会と一体的に、挑戦し続けてほしいと願う。
ここに、あるべき姿の未来を創る挑戦者たちにエールを送る。