生活習慣病の原因となる小胞体ストレスを緩和するしくみ ~Nrf2システムの活性化~

代表者 : 小林 麻己人  

筑波大学 医学医療系 小林麻己人講師らの研究グループは、ヒト糖鎖形成異常症の原因遺伝子PMM2の突然変異ゼブラフィッシュを単離解析し、酸化ストレスや発がん物質の消去に機能するNrf2システムが小胞体ストレスで活性化されることを動物レベルで実証しました。

小胞体ストレスは酸化ストレスと並び、糖尿病や神経変性疾患などの生活習慣病の原因と考えられています。PMM2はN型糖鎖付加に必須の酵素で、変異すると正しい糖タンパク質ができにくくなり、小胞体ストレスを発症することがわかりました。さらにこの小胞体ストレスにより、Nrf2経路が活性化する過程も明らかにしました。小胞体ストレスに対するNrf2システムの機能をNrf2活性化剤及びNrf2突然変異ゼブラフィッシュを用いて調べたところ、Nrf2システムの活性化が小胞体ストレスの緩和につながることがわかりました。Nrf2を活性化する食品としては、ブロッコリースプラウトなどが知られています。Nrf2システムが酸化ストレスのみならず小胞体ストレスの緩和にも有効であることから、Nrf2活性化食品の摂取が生活習慣病の予防に有用であることが期待されます。

 

図 Pmm2変異幼魚ではN結合型糖鎖付加の異常が起こることで、変性タンパクが蓄積して小胞体ストレスを発症していました。この時、細胞は小胞体ストレスに応答し、Perk経路を介してNrf2システムを活性化していました。ブロッコリースプラウトに含まれるNrf2活性化剤スルフォラファンを処理してNrf2システムをさらに活性化させると、小胞体ストレスを発症するPmm2変異幼魚の割合が有意に減少しました。以上の結果から、小胞体ストレスの緩和にNrf2活性化が有効であることが示唆されました。