マウスにおける正常妊娠と子癇前症での睡眠変化 ~母子の健康改善へ、あらたな道しるべ~

代表者 : 柳沢 正史  

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の小宮春奈(大学院学生)、船戸弘正教授、柳沢正史教授らの研究グループは、正常なマウスでは、妊娠中期から後期にかけてノンレム睡眠量が増加し、覚醒時間が減少することを発見しました。

妊娠中、女性の身体にはさまざまな変化が現れ、入眠障害や夜間覚醒などの睡眠障害をきたしやすくなります。子癇、子癇前症という疾患も知られています。しかし、妊娠中の睡眠検査は、身体的な負担になることから、詳細は調べられてきませんでした。

本研究では、健康な妊娠マウスにおける睡眠の変化を解明するとともに、子癇前症モデルマウスでは、血圧が急激に上昇する妊娠後期に、脳波の周波数の全般的な低下が見られ、血中の物質が不用意に脳に入るのを制限するしくみである血液脳関門が一部破綻していることが明らかになりました。この病態は、ヒトにおける子癇発作時の病態とさまざまな点で類似しており、このマウスが子癇モデルマウスとして有用であると考えられます。

 

図 子癇前症における睡眠変化