麻薬性鎮痛薬による眠気に対する新しい戦略を提示 ~眠気の治療薬としてのオレキシン受容体作動薬の可能性~

代表者 : 柳沢 正史  斉藤 毅  

東京慈恵会医科大学下山恵美らのグループおよび筑波大学国際統合睡眠研究機構ほかの共同研究チームは、ラットを用いた実験により、オレキシン2型受容体作動薬がモルヒネの副作用である眠気を改善することを発見しました。

モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は、中枢神経系に作用することで、がんなどさまざまな病気による強い痛みを和らげることができます。しかしその一方で、眠気や注意力の低下などの副作用を引き起こし、患者の日常生活に支障をきたすことが問題となっています。

本研究では、オレキシン2型受容体に選択的に作用する化合物YNT-185をラットに投与すると、鎮痛作用に影響することなく、モルヒネの副作用が緩和されていることを脳波および行動において確認しました。この結果により、オレキシン2型受容体作動薬は、麻薬性鎮痛剤の副作用を軽減する治療薬として有望であることがわかりました。

 

図 モルヒネ投与前の脳波(左)と投与後の脳波(右)。モルヒネ投与により、眠気をきたした時にあらわれる振幅の大きな周波数が低い脳波(高振幅徐波活動)が見られた。