代表者 : 浅野 敦之
筑波大学生命環境系/つくば機能植物イノベーション研究センター 浅野敦之助教の研究グループは、コーネル大学のTravis教授およびStipanuk教授との共同研究により、精子が雌生殖器内で受ける浸透圧的ストレスに対する耐性を獲得するメカニズムの存在を明らかにしました。
精巣において形態的分化を終えた精子は、精巣上体管を通過しながら様々な機能性成分を取り込んだり、機能を終えた分子を放出することにより、受精機能を獲得します(精巣上体成熟)。タウリンは、精巣上体管内腔液に豊富に存在しており、一般的に細胞内浸透圧調整、抗酸化作用、細胞膜安定化など様々な機能を有していることが知られています。精子においても、タウリンには精機能性改善効果があることが古くから知られていました。しかし、その分子メカニズムは不明でした。
タウリン合成を制御する酵素であるシステインジオキシゲナーゼ(CDO)が欠損したマウスの雄が原因不明の赴任となることが報告されており、本研究では、その分子メカニズムの同定を試みました。その結果、CDOは精巣上体領域において豊富に発現してタウリン合成を司ること、また、精子は精巣上体管内腔液からタウリンを吸収することで、雌の生殖器道に侵入した際の浸透圧的ストレスに対する耐性を獲得することがわかりました。
図 雄生殖器道内でタウリンを吸収した精子は、雌生殖器に侵入した際に浸透圧的ストレスを受けても、受精能力を喪失しない(上)。雄生殖器道内にタウリンが分泌されないと、雌生殖器に侵入した精子は、浸透圧的ストレスによって鞭毛が変形し、受精能力を喪失する(下)