筑波大学 計算科学研究センター 古家健次助教、東京大学大学院理学系研究科 相川祐理教授は、宇宙空間における窒素同位体の存在比異常が引き起こされる仕組みを、数値計算によって初めて解明しました。
隕石や彗星などの太陽系物質と、恒星と惑星形成の舞台である星間分子雲に含まれる分子には、窒素同位体の存在比異常が存在します。これら物質中の窒素同位体存在比は、太陽系の物質的起源について重要な情報を持つと考えられています。しかし、どのような機構で窒素同位体存在比の異常が引き起こされるかについては、これまでわかっていませんでした。
今回、数値計算によって窒素同位体の存在比異常が引き起こされる機構が明らかになったことで、今後、窒素同位体の存在比を利用して、太陽系を含め、恒星と惑星系が生まれる際の物質進化の理解がさらに進むことが期待されます。
図 分子雲において窒素同位体の存在比異常を引き起こす機構。分子雲のガス中において、窒素は主に窒素原子あるいは窒素分子として存在しています。星間紫外線に照らされている分子雲の表面では、14N2とその同位体である14N15Nのどちらも効率的な光解離のため、安定に存在することができません。分子雲のある程度内部では、14N2は自己遮蔽効果により、光解離の効率が落ちます。その一方で、存在量の少ない14N15Nは自己遮蔽効果が効きづらく、効率的に光解離します。そのような領域では、窒素原子が星間塵表面反応により氷に取り込まれることで、ガスは窒素15に乏しく、氷は窒素15に富むようになります。希薄な星間ガスから分子雲ができる際には、ガスは必ずこのような領域を通過するため、同位体の存在比の異常は分子雲全体に及びます。