超・準超重症心身障害児の医療利用状況に関する実態調査

研究成果のポイント

1. 複雑な医療的ケアを常時必要とする超・準超重症心身障害児は、高頻度なサービス利用の必要性や家族による介護負担が大きいなどの特徴があると言われていますが(図1)、国内における詳細な医療利用状況の実態は把握されていませんでした。
2. 茨城県内の主要小児医療機関に通院している超・準超重症心身障害児92人を対象に、在宅での医療的ケア導入後の医療機関での外来受診・入院の頻度を調査しました。
3. 医療的ケア導入直後1年目の外来回数は超・準超重症心身障害児ともに20回であり、入院回数は超重症児で3回、準超重症児で2回(いずれも中央値)でした。医療的ケア導入直後の1年間と比較すると、その後の4年間における外来受診・入院の回数は若干減少するものの、有意差が認められるほどの減少はしていませんでした(図2)。

 

研究の概要

本研究は筑波大学ヘルスサービスリサーチ(HSR)分野研究員の山岡(現オクラホマ大学ヘルスサイエンスセンター所属)らにより、HSRと筑波大学小児科との共同研究として、文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム・2014年度公益財団法人勇美記念財団在宅医療助成を受けて実施されました。
本研究により、超・準超重症心身障害児が、高頻度に医療機関を利用しながら在宅生活を継続している実態が明らかになりました。年間約20回の通院、年間2-3回の入院は、児・家族への身体的・精神的・社会的(時間や経済面など)負担が大きいことが推察されます。さらに通院回数は5年間で有意には減少しておらず、継続的に高度なサービス利用が必要であることが示唆されました。児の健康状態の安定や向上、家族の介護負担の軽減を支援していくために、在宅や地域におけるサービス提供体制の拡充が必要であると考えられます。

掲載論文

題名:Hospital-based care utilization of children with medical complexity in Japan
著者:Yui Yamaoka, Nanako Tamiya, Akimitsu Watanabe, Yayoi Miyazono, Ryuta Tanaka, Akemi Matsuzawa, Ryo Sumazaki.
掲載誌:Pediatrics International (doi.org/10.1111/ped.13586)