脊椎動物の「頭」の起源に迫る ~ホヤから脊椎動物への進化の一端を解明~

代表者 : 堀江 健生  

筑波大学 生命環境系 堀江健生助教らの研究グループは、米国プリンストン大学との共同研究により、脊椎動物の頭部感覚器を生み出す頭部プラコード、神経堤細胞の進化的な起源とその発生プログラムを明らかにしました。

本研究では、ホヤにおいて頭部プラコードと神経堤細胞の起源にあたる性質を備えた細胞の発生プログラムについて、細胞系譜追跡実験、遺伝子機能阻害実験、単一細胞トランスクリプトームなどの手法を組み合わせた包括的な解析を行いました。その結果、1)神経板境界領域は、Foxc, Six1/2, Msxbという遺伝子によって区画化されており、これらの遺伝子による区画化のパターンはホヤと脊椎動物の間で保存されていること、2)各遺伝子で区画化された領域から、頭部プラコード、神経堤細胞の性質を備えた感覚神経細胞が産み出されること、3)頭部プラコードと神経堤細胞はお互いに運命を変換することが可能な似た性質を備えていることを示しました。

 

図 脊椎動物とホヤの神経板境界領域の模式図
図の上半分は脊椎動物の神経板境界領域を、下半分はホヤの神経板境界領域を示している。赤紫色がプラコード、緑色が神経堤細胞、水色と紺色が神経板を表している。頭部プラコードは神経板の前方に、神経堤細胞は神経板の側方の後方に位置している。頭部プラコードからは耳や鼻などの感覚器官が、神経堤細胞からは末梢神経細胞や色素細胞、頭部の骨組織などが分化する。頭部プラコード、神経堤細胞の位置関係は、脊椎動物とホヤで良く似ている。