代表者 : 釜江 陽一
東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩教授、筑波大学生命環境系の釜江陽一助教らの研究チームは、気候システムおよび大気のエネルギー収支に関する考察から、大気下層の雲の変化が 2 つの感度を関連付けるという仮説を提唱し、それを東京大学・国立環境研究所などで共同開発された日本の気候モデルである MIROC5.2を用いたシミュレーションで確かめました。
この新しく特定されたメカニズムでは、下層雲が温暖化時に減少すると日射の反射が減少することで正の雲フィードバックをもたらし、平衡気候感度が大きくなる一方、大気から出てゆく余剰な赤外エネルギーも減少するために、大気のエネルギーバランスから降水量の増加が小さくなります。シミュレーションから、こうした平衡気候感度と水循環感度の反比例関係が明瞭に見出されました。さらに、CMIP5 の 25 の気候モデルでも、同様の雲の働きがあることが分かりました。これに、衛星観測による放射データを組み合わせることで水循環感度を制約することを試み、降水量の増加は CMIP5 気候モデルのシミュレーションから直接推定される値よりも約 30%も小さくなるという結果が得られました。