「珍渦虫」の新種を発見生物進化過程の研究進む

代表者 : 中野 裕昭  

生命環境系 中野 裕昭 准教授

 中野裕昭准教授(生環系)らの研究チームは、動物の共通の祖先に近いとされる海の生物、「珍渦虫」の新種2個体を2013年から15年にかけ、東北沖と三浦半島沖の海底で発見した。珍渦虫は過去、世界で5種が見つかっているが、日本での新種発見は初で、生物の進化の過程に関する研究が進展することが期待されている。
 珍渦虫は海底をはって移動する動物。腹側に口とそれに続く腸のような袋構造を持つだけの非常に単純な構造で、脳や中枢神経系、生殖器、肛門はない。この単純な構造から系統的にどの動物に近いのか判断が難しく、その分類が議論されてきた。 だが最新のDNA解析から、脊椎動物門に比較的近い動物、または動物の共通の祖先に近い動物のどちらかに分類されることが判明。また、その単純な構造は全ての動物に共通する祖先の形質を引き継いでいるともされ、動物の起源や進化の研究で注目を浴びている。しかし、その繁殖方法や成長過程など未解明の問題も多いうえ、系統樹(*注)での詳細な位置づけも分かっていない。このため、動物の起源をたどるためにも、これらの謎の解明が期待されている。
 同チームは北海道大や国立科学博物館(東京都台東区)の研究者などと共に、日本各地の近海で海底の生物を採集し、珍渦虫の探索を行ってきた。そんな中、13年の7月と15年の12月に、それぞれ東北沖と三浦半島で2個体を採取。下田臨海実験センター(静岡県下田市)でのDNA解析などで新種と判明した。 さらに、中野准教授はこの2個体の内部構造の観察・解析で、立体構造を画像化できるマイクロCTを世界で初めて珍渦虫に使用。その結果、腹側の前方に一つの小さな孔を発見し、それが珍渦虫の器官だとも分かった。これについて中野准教授は「海底をはう時に分泌される粘液を体外に出すための孔ではないか」と推測している。
 中野准教授はこれまでスウェーデン沖で採集した珍渦虫を研究していたが、▽現地では水面が凍り採集できない時期がある▽日本に到着するまで時間がかかる……などの難点があった。今回の日本近海での発見は、これらの難点を解消し、日本での研究の効率化につながると期待されている。今回の一連の成果をまとめた論文は、12月、生物系の専門誌「BMC Evo lutionary Bio logy 」に掲載された。
 中野准教授は「珍渦虫の生態や系統関係の解明は、動物の進化の理解につながる。今後は、実験所で珍渦虫が飼育できる条件なども併せて研究していく」
と話している。系統樹=生物の進化やその分岐の道筋を樹木の枝のように表したもの。

*注:生物の進化やその分岐の道筋を樹木の枝のように表したもの。