進化の過程で失われた遺伝子がヒトに動脈硬化をもたらす

代表者 : 川西 邦夫  

筑波大学 医学医療系 川西邦夫助教らの研究グループは、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego, UCSD)のGlycobiology Research and Training Centerで行なった研究において、ヒトが進化の過程で失った遺伝子CMAHが、動脈硬化の原因となる可能性を見出しました。

CMAHは、細胞表面を覆う糖鎖の末端に位置するシアル酸Neu5AcをNeu5Gcに変換する酵素で、ヒト以外では、ほぼ全ての哺乳類がCMAHを持ち、Neu5Gcを含む糖鎖を合成していますが、ヒトでは、およそ2〜3百万年前にCMAHの機能が失われたと考えられており、Neu5Gcを作ることができません。微生物の多くが、細胞の糖鎖末端に位置するシアル酸を認識して宿主に感染することから、Neu5Gcの欠失は、ヒトが他の哺乳動物と共存する上で、人畜共通の感染症リスクを低下させる一助になったと考えられています。

本研究グループは、ヒト同様にNeu5Gcを合成できないCmah欠損マウスは、野生型マウスに比べて、進行した動脈硬化病変を形成することを発見しました。ヒトが抗Neu5Gc抗体を持つこと、赤身肉がNeu5Gcを多く含むことから、Cmah欠損マウスに抗Neu5Gc抗体を惹起させ、Neu5Gcを含む食事を与えると、他の実験条件と比べて動脈硬化が悪化することがわかりました。

 

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