筑波大学生命環境系の三浦謙治教授、寿崎拓哉准教授らの研究グループは、植物における環境トレス応答の遺伝子発現調節において、タンパク質の翻訳後修飾の1つであるSUMO化に関わる因子のSIZ1(SUMO E3リガーゼ)が持つPHD(plant homeodomain)フィンガーが、遺伝子発現に関わるトリメチル化ヒストンH3を特異的に認識することを明らかにしました。
SUMO化は、植物の環境ストレス応答や、植物ホルモン応答といったシグナル伝達や遺伝子発現調節に重要な役割を担っていることが知られています。SUMO化にはE1, E2, E3タンパク質が必要であり、E3リガーゼ(合成酵素)はSUMO化による遺伝子発現調節において鍵となるタンパク質です。植物では、SIZ1と呼ばれるタンパク質がSUMO E3リガーゼとして働くことが既に知られていますが、動物のSIZ1とは異なり、植物SIZ1はPHDフィンガーと呼ばれる、C4HC3型ジンクフィンガーを持っています。
本研究グループは、このPHDフィンガーがSIZ1の機能において重要不可欠であり、トリメチル化されたヒストンH3を特異的に認識することを見出しました。また、ヒストンのトリメチル化に関わるATXタンパク質と相互作用することがわかりました。本研究により、SIZ1による遺伝子発現調節に、PHDフィンガーを通じたトリメチル化ヒストンH3やATXタンパク質との相互作用が重要な役割を果たすことが明らかとなりました。