ダウン症患児では鎮静剤ミダゾラムの効果が減弱する

代表者 : 井上 貴昭  平松 祐司  

筑波大学 人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻 松石雄二朗(博士課程3年)、医学医療系 井上貴昭 教授(救急・集中治療医学)、平松祐司 教授(心臓血管外科学)、茨城キリスト教大学 看護学部 櫻本秀明 准教授らの研究グループは、心臓外科手術の術後に投与される一般的な鎮静剤ミダゾラムが、ダウン症患児に対しては作用減弱していることを初めて明らかにしました。

ダウン症患児における鎮静剤の薬剤耐性については、対象者数が少ないことから、臨床における研究はあまり進展していませんでした。これまでに、鎮静剤の作用部位の変性がダウン症疾患の動物モデルで認められるという報告があり、これに基づいて本研究グループは、心臓外科術後におけるダウン症患児の鎮静状態と鎮静剤の投与量の観察を行ったところ、ダウン症患児は、そうでない患者に比べて、鎮静剤ミダゾラムの作用が有意に減弱していることを見出しました。

図 ダウン症の有無と、デクスメデトミジンおよびミダゾラムの鎮静作用の減弱
紫線は非ダウン症患児、黄色線はダウン症患児を表す。横軸は薬剤の投与量、縦軸は鎮静スケールSBSによる鎮静状態を示し、数値が低いほど深い鎮静状態であることを意味する。左図のデクスメデトミジンでは、紫の線(非ダウン症患児)と黄色の線(ダウン症患児)の鎮静状態は平行に推移しており、鎮静作用の差は観測されない。一方、右図のミダゾラムでは、薬剤の用量を増やすにつれて、非ダウン症患児は鎮静が深くなるのに対し、ダウン症患児は非ダウン症患児ほど鎮静が深くなっていないことが観察された。