隕石衝突後の環境激変の証拠を発見 〜白亜紀最末期の生物大量絶滅は大規模酸性雨により引き起こされた?〜

代表者 : 丸岡 照幸  

筑波大学 生命環境系 丸岡 照幸 准教授、高知大学 農林海洋科学部 西尾 嘉朗 准教授、京都大学 大学院人間・環境学研究科 小木曽 哲 教授、海洋研究開発機構 海底資源センター 鈴木 勝彦 センター長、日本原子力研究開発機構 大澤 崇人 研究主幹、量子科学技術研究開発機構 初川 雄一 専門業務員、高輝度光科学研究センター 寺田 靖子 主幹研究員からなる研究チームは、白亜紀―古第三紀(K-Pg)境界層試料について、放射光を利用した蛍光X線微量元素マッピング分析、中性子放射化分析、質量分析計全岩元素分析を行い、隕石衝突直後の地球環境変動のうち、大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を発見しました。

白亜紀最末期(約6600万年前)に直径10km程度の巨大隕石が衝突し、生物大量絶滅につながったことは、これまでの様々な研究により、広く受け入れられています。しかし、生物大量絶滅を引き起こした、隕石衝突直後の環境激変がどのようなものであったかに関しては、未だに不明な点が多く残されています。本研究では、K-Pg境界層試料に対して、大型放射光施設SPring-8の放射光を用いたマイクロメートルレベルでの微量元素マッピングを適用し、酸性雨によって形成されたと考えられる銀・銅に富む微粒子を発見しました。これまでも、K-Pg境界の隕石衝突直後に大規模な酸性雨が発生したことは示唆されてきましたが、その決定的な証拠は得られていませんでした。このような大規模な酸性雨は、K-Pg境界における生物大量絶滅を引き起こした原因となった可能性があります。

図 本研究で明らかとなった、K-Pg境界における巨大隕石落下直後の大規模酸性雨と銀・銅に富む粒子の生成の仕組み
巨大隕石が衝突した地層は石灰岩・蒸発岩から構成されるが、衝突による加熱によりCO2や三酸化硫黄SO3が放出される。SO3は硫酸H2SO4となり、硫酸エアロゾル(微粒子)を形成する。硫酸エアロゾルは雨水に溶解して硫酸酸性雨となる。隕石衝突によりクレーターから放り出された破砕岩片は再び地上に向けて落下し始める。岩片直下の空気は断熱圧縮という現象により加熱され、そこで一酸化窒素(NO)が形成される。NOはNO2を経てHNO3へ達し、硝酸エアロゾルを経て、硝酸酸性雨となり地上に到達する。 これらの酸で溶かし出された銀(Ag)や銅(Cu)は河川を通じて海洋に達し、そこで銀・銅に富む粒子が形成される。イリジウムなどの隕石に起因する成分は、衝突による加熱により気化するが冷却されて固体凝縮物を形成する。これらも海洋底に達し、堆積物に取り込まれる。