T細胞リンパ腫に他の血液がんの薬剤が有望であることを発見

筑波大学医学医療系の千葉滋教授・坂田麻実子准教授らの共同研究グループは、これまでに、高齢者で発症頻度の高い特定の悪性リンパ腫(血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)およびその他の濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫)についてゲノム異常の解明を行ってきました。今回、こうしたゲノム異常を模倣するモデルマウスを作製、治療モデル実験を行い、他の血液がんに使用される薬剤ダサチニブが、AITLおよびその他の濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫の治療薬として有望であることを示しました。

血液のがんである悪性リンパ腫は多数の亜型に分類され、それぞれに病因や最適な治療法が異なると考えられています。また亜型ごとに異なる遺伝子変異が明らかにされつつあります。今回の研究ではまず、AITLおよびその他の濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫のゲノム異常情報を模倣するマウスを作製し、本疾患のモデルとなる腫瘍を発症することを示しました。また、このマウスを利用してダサチニブによる治療モデル実験を行い、ダサチニブがAITLおよびその他の濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫の治療薬として有望であることがわかりました。これに基づいてAITL患者にダサチニブに投与する臨床試験を実施したところ、5例中4例で効果を確認しました。これらの結果を受けて、現在、国内多施設共同でダサチニブの効果を調べる医師主導治験が始まっています。

図 ダサチニブにより、濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫の実験モデルマウスの生存が延長した