代表者 : 紙上 敬太
筑波大学 紙上(かみじょう)敬太准教授、バーゼル大学(スイス) Sebastian Ludyga博士らの研究グループは、メタ分析(既存の知見を統合する統計的な手法)によって、「これまでの研究からどのような運動が認知機能を改善させると言えるのか」を明らかにしました。
過去30年間にわたる様々な研究によって、習慣的運動が認知機能を改善させることが示されてきました。しかしながら、「どのような運動が認知機能の改善には効果的なのか?」、「どれくらいの運動が認知機能の改善には必要なのか?」、「性別や年齢によって運動が認知機能に与える効果は異なるのか?」などの疑問点に対して明確な答えは示されていません。これらの疑問点に答えるため、本研究ではメタ分析を行い、以下の知見を得ました。
1. 運動の種類にかかわらず、習慣的な運動は認知機能を改善させるが、その効果は有酸素トレーニングや筋力トレーニングよりも、コーディネーショントレーニング(手足の協調運動やボールドリブルなど、身体や物のコントロールが求められる神経系のトレーニング)で大きい。
2. 比較的長時間(60~90分)の運動を長期間(22週間以上)継続すると、運動が認知機能に与える効果は高まる。
3. 認知機能の改善には、男性の場合、徐々に強度を上げていく漸進性トレーニングが適しており、女性の場合、漸進性を有さない低強度~中強度のトレーニングが適している。
4. 運動が認知機能に与えるポジティブな効果は、年齢にかかわらず認められる。