国立大学法人筑波大学医学医療系のヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授らと株式会社GMSSヒューマンラボの安藤裕一博士の共同研究チームは、スポーツ庁が2016年に実施した「総合型地域スポーツクラブ活動状況調査」の回答データを2次利用し、高齢会員の割合の違いによる安全対策の差異を分析しました。また地域ごとの状況についても分析しました。
具体的には、全国の総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)を高齢会員の割合によりA〜Dの4群に分類し、各群における基本的情報(会員数、シニア会員数、クラブ収入総額、スポーツ指導者数など)と危機管理方策や事故防止対策など安全対策(全13項目)の実施割合の違いを統計学的に分析しました。
その結果、60歳以上の会員割合が最も高いD群は、人的規模(会員数、指導者数)や予算規模が小さく、安全対策については6項目(熱中症対策、地域の医師との連携など)で実施割合が最も低値となりました。全国を6地域に分けた比較では、関東が安全対策の実施割合が高く、13項目中10項目で最も高くなりました。一方、近畿は安全対策の実施割合が低く、8項目で最低となりました。
運動は多くの疾病予防に有効であることから、健康寿命の延伸に役立つと考えられています。しかし、高齢者は体力などの低下に加え、疾病を有する可能性が高いため、運動に際しては安全への配慮が欠かせません。全国に普及する総合型クラブは、地域住民の健康増進が期待される役割の一つですが、高齢者に着目した総合型クラブの安全対策についての検討は行われていませんでした。今回の分析成果は、高齢者の健康増進に向けて、スポーツクラブに安全対策の向上に対する取り組みを促すものであり、高齢者が安心してスポーツに参加できる環境づくりの推進につながることが期待されます。