2020/06/15
筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野の田宮菜奈子教授、小竹理奈・医学類6年生(現研修医)、羽成恭子・大学院医学系専攻博士課程らの研究グループは、介護老人保健施設(老健施設)における遺族の満足度と関連する施設の体制要因を調査しました。
全国老人保健施設協会が2014年に実施した二つのアンケートのデータを2次利用しました。調査対象は老健施設で看取りを経験した遺族と、その遺族が看取りを経験した老健施設の管理医師、施設管理者です。遺族における看取りの「満足度」と関連する各施設での各種説明体制、運営・教育等への取り組み状況を、多変量ロジスティック回帰分析により分析しました。
その結果、遺族の看取り「満足度」と有意に正の関連を示したのは、▽入所時や病態悪化時に利用者及び家族に対する状況説明が医師・多職種協働でなされていること▽施設職員のストレスマネジメントに取り組んでいること▽利用者への定期的な診察があること――などでした。
世界的には、看取りの質の評価は遺族調査が主ですが、研究グルーが調べた限りでは、日本の老健施設における看取りの質に関する調査研究で、遺族を対象としたものは今までありません。
老健施設での死亡者数が増加傾向にあります。終末期医療の充実が課題となっている我が国で、質の高い看取りを提供できるよう老健施設の体制を整えることは重要だと考えられます。
本研究の結果から、多職種の職員が効果的に役割を果たしていくことが、遺族の高い看取りの満足度に関連することが示唆されました。今後,老健施設の管理医師をはじめとする医療介護提供者に、施設における多職種連携の重要性や職員のストレスマネジメントの取り組みをさらに周知することによって、看取りの質が向上することが期待されます。
図 分析対象者決定までのフロー