鉄細菌が集団で伸長していく仕組みを解明 分泌されるナノ繊維が制御し環境に適応

代表者 : 野村 暢彦  

 鉄分の豊富な湧き水や沼などに生息する鉄細菌レプトスリックス属は、菌体表面から無数のナノ繊維を分泌
します。これらの繊維が絡まった「チューブ原基」の外側に酸化鉄粒子が沈着することで細かいチューブ状の集
団を形成しています。
 筑波大学生命環境系の野村暢彦教授らは、微細加工技術を駆使して高さを1.3マイクロメートルに制限した
二次元空間を持つマイクロ流路デバイスを作製しました。これを用いて培養したところ、鉄細菌のチューブ状
の細胞集団形成をリアルタイムで観察することに成功しました。
 さらに蛍光顕微鏡や大気圧走査電子顕微鏡で観察した結果、表面接着直後のナノ繊維の分泌には偏りがあ
り、細胞集団の伸長に関わることや、細胞集団が壁に衝突しても、屈曲や反転によって伸長を続けることが明ら
かになりました。分泌されるナノ繊維が伸長を的確に制御することによって、鉄細菌は狭い空間でも集団を最大
化し環境に適応しています。

鉄細菌がつくるチューブ原基はさまざまな金属イオンを吸着するため、水処理施設で金属除去システムとし
て利用されています。また、鉄を吸着したチューブは顔料、電極、触媒、農薬などへの利用が模索されていま
す。今回の成果は、これらの分野のさらなる進歩に寄与することが見込まれます。