2020/07/17
国立大学法人筑波大学生命環境系・山岳科学センターの奥脇亮助教、八木勇治教授、清水宏亮大学院生(当時、現気象庁)と立命館大学理工学部物理科学科の平野史朗助教らの研究グループは、八木教授らが開発した最新の地震波形解析手法を用い、2018年にインドネシアで発生した巨大地震を解析しました。これにより、2018年インドネシア地震の地震破壊成長は、断層の屈曲に沿って停滞と進展を繰り返す、特異な様式を持つことを明らかにしました。
地震破壊の発生する断層は、段差や折れ曲がりなど、複雑な形状を持つことがわかっています。こうした断層の幾何的複雑性と巨大地震の破壊成長様式の関係は、理論的な研究によりさまざまなモデルが提案されている一方、実際の地震を使ってその検証を行うのは困難でした。
本研究では、2018年にインドネシアで発生したマグニチュード(M)7.6の巨大地震に対し、世界各地で観測されたその地震波形データを使い、複雑な断層形状と地震破壊成長の関係を詳細に解析する最新手法を適用しました。その結果、超せん断速度で進展する破壊前線は、まるで尺取り虫が進むように停滞と進展を伴いながら伝播することが分かりました。
更に、この破壊前線は、断層形状が破壊成長にとって不都合な折れ曲がりをもつ場合には停滞し、逆に破壊成長の好む折れ曲がりを持つ場合には進展することを、実際の地震波形データ解析により初めて明らかにしました。
本研究結果は、断層形状の複雑性が巨大地震の破壊成長を決定する重要な因子であることを示しており、巨大地震の発生メカニズムを理解する上で重要な新知見です。
図:地震破壊成長と複雑な断層形状との関係を破壊成長過程のスナップショットで示す。色付けした等高線で断層すべり速度の大きさを示す。赤太線は断層形状。各パネルの左上に、破壊開始からの経過時間を示す。星印で示した震央から、破壊前線が南へと伝播し、断層の屈曲Bend1では破壊前線の停滞、屈曲Bend2では破壊前線の進展が顕著にみえる。破壊前線の停滞と進展の様子を、尺取虫の運動で図化した。