日本人には非肥満脂肪肝患者が多い ~高齢者に多く、筋肉の量と質の低下が関連する~

代表者 : 正田 純一  

2020/07/27 

非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)患者は、欧米では肥満者において有病率が高値ですが、日本を含むアジアでは肥満のないNAFLD(非肥満NAFLD)も高頻度に認められます。しかし、その理由は十分に解明されていません。国立大学法人筑波大学 医学医療系 正田純一教授らの研究グループは、本学附属病院内つくばスポーツ医学健康センターの肝臓生活習慣病外来に通院する日本人のNAFLD患者を対象に、後ろ向き解析を行い、NAFLD患者を性別、体格指数(BMI)別に層別化して、非肥満NAFLD患者の症状について解析を行いました。

非肥満NAFLD患者では、肥満NAFLDと高度肥満NAFLDに比べて、男女ともに骨格筋量は低値でした。また、男性の59%、女性の44%において、内臓脂肪型肥満が認められました。肝脂肪蓄積と肝線維化の程度、および、インスリン抵抗性の度合いは、いずれも肥満NAFLDと高度肥満NAFLDに比べて軽微でした。しかしながら、脂肪性肝炎(NASH)患者の特定に用いるFibroscan-AST Score(FAST score)の計算値より、非肥満NAFLDでは、男性の9%、女性の33%に、線維化が進みNASHに移行する可能性が示唆されました。

さらに、非肥満肥満NAFLD患者は、肥満もNAFLDもない者(非NAFLD)に比べて、骨格筋量は同等でしたが、特に女性において筋脂肪化が顕著でした。一方、体脂肪量、内臓脂肪面積とウエストヒップ比は高値でした。多変量解析により、非肥満NAFLDの肝脂肪蓄積に寄与する因子は、内臓脂肪面積およびHbA1c(ブドウ糖と結合したヘモグロビン)、ミオスタチン、レプチンでした。

非肥満NAFLD患者は男女ともに高頻度に認められました。線維化進行例については性差が認められ、女性に多く見られました。非肥満NAFLDに関わる因子として、内臓脂肪の増加、骨格筋量と筋力の減少と筋組成の劣化(プレサルコペニア:サルコペニア前段階)、および、これに関連した糖代謝の異常が考えられました。非肥満NAFLDの治療には食事療法のみならず、運動による骨格筋の維持が重要となります。

図 本研究の対象者の非肥満NAFLD、肥満NAFLD、高度肥満NAFLDの割合と年齢分布