海外に比べわが国では、認知症の人に対する非薬物的な介入に関する研究(特に構造化されたデザインによるもの)が少ないのが現状です。そこで、本リサーチユニットでは、認知症の本人の精神機能や体験世界(心理的視点)や、本人だけでなく介護者や地域の人の視点等の相手側の視点も含めた対人機能や人のつながり(社会的視点)に加え、器質的な変化としての認知症の進行(生物的視点)を考慮した、本当の意味での生物・心理・社会的な視点から配慮できる非薬物的な介入に関する研究・実践を目指しています。なお、社会的視点には、周囲の人々の認知症に対する理解や彼ら自身のQOLも含まれます。
上記の点を考慮したうえで、具体的には、認知症の人の認知機能の活性化や維持のためのプログラム開発や、チャレンジング行動(認知症の行動・心理症状:BPSD)への対応・予防のための介入法の開発、それらの効果検証のためのアセスメントツールの開発、認知症や認知症の人に対する地域や社会の望ましい態度形成に関するプログラムやツール等の開発を目指しています。
これまで、認知活性化療法の日本版開発、応用行動分析を基盤としたチャレンジング行動への介入プロトコルの開発、認知症の人のQOLに関する国際的な尺度や認知症の啓発に用いる知識尺度の開発、認知症の障害観に関する提案などを行ってきました。今後は、こうした研究やアプローチを体系化し、各地域で広く実践されることを意識した研究も行いたいと考えています。