震災における資料の散逸を典型として、人間が過去から蓄積してきた有形無形の記憶資源の保全が不十分であることから、記憶資源の構築を通じて文化遺産の保全を強化することを目的とした取組を実施しています。具体的には、記憶資源に関する物理的な属性情報と記憶資源に内在する人々の記憶や思考、そしてそれらの意味的つながりが失われていることを問題視し、文化遺産に関わる情報と記憶を記憶資源内に記述することを目標としています。
これまで、福島県双葉町の東日本大震災避難所跡および被災状況の調査および双葉町の古文書、歴史資料の救出・保存が一通り完了しました。避難所跡の資料には、励ましの千羽鶴、寄せ書き、祭りの道具、看板など生々しいものが多数あります。これらの資料に内在する人々の記憶を記憶資源内に記述します。また、世界各地の大災害の被災地の視察と災害遺構・災害資料の調査のため、現地での調査も継続して実施します。
本研究が構築する記憶資源は、必要な場所、必要な時、必要な人に知識をオープンデータとして提供することで、現代社会の様々な課題解決に必要な情報インフラとなることで、情報への公共アクセスを保障し、文化多様性に関する学習を促進する効果も期待できます。