代表者 : 中務 孝
原子炉による発電から排出される廃棄物には、高レベル放射性廃棄物と呼ばれる高い放射性をもつものがあり、この中には半減期の長い核種が多く含まれています。これらは非常に長期にわたって放射線を出し続けることになるため、廃棄が非常に厄介であり、国内では最終処分場も決まっていない状況です。一方で、放射線を出すことを除けば、ウランの核分裂に由来する長寿命核分裂生成物(LLFP)の中には、多くの貴重な資源も含まれています。
本研究課題は、放射性廃棄物の処理・処分に伴う負担、環境負荷リスク等の軽減や資源の有効活用を究極の目的として、半減期の長い核種を核変換させ、半減期を大幅に短くする(あるいは逆に安定核にする)ことを目指しています。そのためには、まず準備段階として、多くの基礎データを収集・整備・評価することが必要です。未知の原子核に関する多くの核反応データを取得するためには、最新の実験施設と新しい実験手法を用いることだけでなく、同時に原子核構造・反応理論の高度化・精密化によって、実験を補佐し、実験だけでは取得困難なデータを理論的な計算によって構築することも重要です。
筑波大学では、核構造・反応に関わる理論モデルの精緻化と新たなモデルの開発、また将来必要とされる大規模数値計算に向けたコード開発を主に担当し、他大学や研究機関と共同で本研究課題に取り組んでいます。