大動脈瘤発症の分子機構解明と新しい治療標的分子の探索

代表者 : 柳沢 裕美    
他のメンバー : 山城 義人  平松 祐司  

大動脈瘤は血管壁が異常に拡張し、破裂、やがて死に至る疾患です。しかしながらその発生メカニズムの詳細が未だ明らかになっていないため、内科的治療法が存在していません。従って、大動脈瘤発症の分子メカニズムを明らかにし、疾患の予防・治療法の開発へと結びつけることが喫緊の課題です。

本研究グループはこれまでに、血管弾性(伸びた血管が元に戻る力)を制御する細胞外マトリクス蛋白であるフィブリン4の欠損が、大動脈瘤を引き起こすことを発見しました(Huang et al. Circ. Res., 2010)。また、大動脈瘤病変部では動脈壁の肥厚、弾性線維の崩壊、血管平滑筋の増殖、レニンーアンジオテンシン系のシグナルが局所的に増加していることを明らかにしました(Huang et al. Sci. Transl. Med., 2013)。さらに、タンパク質の発現を網羅的に調べるプロテオミクス解析と生化学的・組織学的手法を組み合わせて、細胞骨格を制御するスリングショット-コフィリンの活性化が新しい大動脈瘤の治療標的分子になり得ることを特定しました(Yamashiro et al. Sci. Signal., 2015)。
本研究により、大動脈瘤発症に関与するシグナル伝達経路が見出され、新しい創薬ターゲットとなることが期待されます。今後、これらの分子の阻害剤の開発や、血管壁を維持するために重要な弾性線維形成との関わりを明らかにし、臨床応用を目指します。