海洋の生物多様性・生態系に対する気候変動の影響予測

代表者 : 稲葉 一男    
他のメンバー : Agostini Sylvain  Harvey Benjamin Paul  今 孝悦  和田 茂樹  

人為起源の二酸化炭素(CO2)に起因する地球温暖化ならびに海洋酸性化は、海洋の生態系に劇的な変化をもたらすと考えられております。例えば、温暖化の進行に伴って、海洋生物は至適水温の海域を求めて北上するといった海洋生物の生息域への影響等が考えられます。代表的な例はサンゴであり、沖縄などの熱帯海域は過剰な水温上昇が白化を引き起こし、これまで分布していなかった温帯域に生息域を広げつつあります。海洋酸性化は、石灰化阻害や生物の代謝異常などを引き起こし、結果的に石灰化生物の減少や海洋生物の小型化など、海洋資源の枯渇を招きかねない事態を引き起こしています。
下田臨海実験センターでは、海洋生物に対する温暖化・酸性化の影響を室内のラボ実験、大規模培養器を用いた生態系隔離実験(メソコスム)、そして伊豆諸島・式根島にあるCO2シープを酸性化の進行した仮想的な未来の海とみなしたフィールド実験を通じて、以下の2点から多角的に気候変動に対する海洋の生物多様性・生態系の応答解明に取り組んでいます。
1) ラボ実験を主とした個々の生物種レベルへの影響評価
サンゴやウニなど、生態系において重要な役割を担う生物群に対する気候変動の影響を、水温やpHを調整した水槽設備を利用して解析し、至適水温・至適pHと分布の関連を明らかにします。
2) メソコスムおよびCO2シープを利用した、生態系レベルでの影響評価
特に式根島で発見したCO2シープは、世界でも貴重な酸性化した自然の水域であり、生物多様性、物質循環、動植物の代謝生理、行動など、下田臨海実験センターの持つ多様な研究分野が協力して多角的な解析を実施します。
上記2点の研究を通じ、酸性化が個々の生物にもたらす影響だけでなく、生態系の変化とその要員となる個々の生物の応答を示すことで、海洋資源に対する気候変動の影響予測に貢献します。