JAMBIO沿岸生物合同調査に基づく海洋資源の把握

代表者 : 中野 裕昭  

海洋生物を含む海洋資源を保全し、それを持続可能な形で利用するには、そこに生息する生物の種の組成や密度などを把握することが重要です。海に囲まれた我が国では、これまでにも多くの生物相調査が行われてきており、特に魚介類など直接的な水産資源を主な対象としたものが多く行われてきました。しかし、海洋という環境は多くの生物・非生物の相互作用によって成り立っており、一部の生物の情報を把握しただけでは、資源を保全し、それを持続可能な形で利用することは困難です。また、現在は水産資源とみなされていない種が今後有益となることも考えられます。
マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)は、我が国の海洋生物学分野の共同利用・共同研究を推進することを目的として設立された組織であり、その拠点戦略プロジェクトの一つとしてJAMBIO沿岸生物合同調査が実施されています。本調査では、筑波大学下田臨海実験センターと東京大学三崎臨海実験所を中心に日本各地の臨海実験施設において、今までの調査ではあまり調べられていなかった沿岸域に生息している大きさ数cm以下の動物種を主な対象として生物相の調査を行なっています。
本調査は2019年5月までに約5年間で計20回開催され、34機関から延べ380人の参加者があり、今後も継続して調査を行っていく予定です。第6回目までの調査で、すでに約50種の未記載種の採取に成功しており、沿岸域には未解明の動物多様性が存在することが判明しました。また、日本初や太平洋初報告となる種も採取されており、系統地理学や生態学にとって重要な発見もされています。本調査で採取された生物の情報はJAMBIO沿岸生物データベース(RINKAI)にて公開されています。