代表者 : 田中 健太
新薬の6割は生物由来であるなど、生物多様性は人類社会の存続基盤であるといえます。大村博士のノーベル医学生理学賞でも注目された微生物遺伝資源の大半は、植物など特定の生物に共生・寄生して生息している寄主特異的種である可能性があります。しかし、その解明は遅れており、未知のまま寄主生物とともに絶滅している可能性もあります。これらの遺伝資源を把握・保全することは、人類社会の持続性と将来世代との間の公平性の観点から喫緊の課題であると考えられます。
そこで、本研究では、高原・高山植物の多様性を誇り、その多くが絶滅の危機に晒されている菅平高原をモデル地域として、1)植物300種の根・葉・繁殖器官の次世代シーケンシングによる網羅的微生物検出により、未利用遺伝資源の探索・把握を行う、2)それらの微生物遺伝資源を単離培養し、抽出物を生物検定することによって製薬ポテンシャルを評価することを目指します。これまでの成果から、製薬ポテンシャル陽性菌の製薬成功確率と平均市場価値が分かっているので、菅平高原の未利用遺伝資源の潜在価値を経済評価することが可能です。また、3)生態系管理施策による希少植物保全効果を明らかにするとともに、それらの管理施策を実行するための社会条件を割り出し、未利用遺伝資源を次世代に継承するための地域単位での生態系利用策を構築することを目指します。