菅平高原は日本有数の高原野菜生産地であり、都市部の消費を支えている地域です。しかし、農地からの土砂流出により、菅平湿原の生態系が損なわれ、多数の希少動植物が絶滅の危機に瀕しています。また、下流の菅平ダムにも土砂が堆積し、流域農家3,800戸への農業用水供給、25,000人への上水供給、2,700世帯への電力供給などのダム機能が損なわれています。そのため、土壌流出を伴う高原農業を環境配慮型に転換することが、流域全体の持続性にとって不可欠です。
そこで、1)分散型沈砂池、畑堤、透水マルチング資材等の土砂流出軽減効果と社会的費用の定量的評価を行います。また、2)土砂流出が生態系及び動植物・栄養塩循環に与えている影響と、土砂流出軽減施策による効果を解明することを目指します。さらに、3)上流域を環境配慮型農業に転換する費用の一部を、ダム運営者や下流のダム受益者負担する方式の実効性や成立条件を社会分析によって明らかにし、流域レベルの土砂移動管理施策を構築することを目指します。