国立大学法人筑波大学計算科学研究センター 小泉裕康准教授は、現在、広く適用されている超伝導理論では説明ができなかった、超伝導体が磁場中で超伝導状態から通常の金属状態(常伝道状態)に相転移する際、超伝導電流がジュール熱を発生せずに消失するという現象の、理論的解明に成功しました。
本研究が提唱する新理論では、「超伝導電流はベリー接続」によって生じる集団モードが作るループ電流の集まりである」と考えるべきであることが示されました。また、ベリー接続の生成にはラシュバ型スピン軌道相互作用が重要である可能性を明らかにしました。
現在の超伝導の標準理論は、超伝導電流の説明の点で問題があることが度々指摘されてきました。今回の成果は、この問題点を解消するために、標準理論をどのように変更していくべきかについての一つの指針を提示したことになります。標準理論が変更されることにより、長い間、メカニズムが不明のままになっている、銅酸化物高温超伝導の機構解明が達成される可能性もあります。さらに、超伝導体を量子ビットとして使うエラー訂正機能を備えた量子コンピュータの実現に関しても、重要な貢献になり得ると考えられます。