国立大学法人筑波大学 生存ダイナミクス研究センター(TARA) 深水昭吉教授、同 橋本美涼博士(現 国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学 応用生物科学部助教)の研究グループは、マウスを使った解析により、発達中の脳において、生合成されたタンパク質に生じる様々な化学修飾(翻訳後修飾)の一つである「アルギニンメチル化」が炎症状態の誘導に関与することを見出しました。
発達期の脳の炎症は、損傷や胎児期の母体の感染等によって引き起こされ、脳の発達に深刻なダメージを与えます。アルギニンメチル化酵素PRMT1の脳特異的欠損マウス(KOマウス)では、ミエリン(神経細胞の髄鞘)がうまく作られないなど脳が正常に発達せず、生後約2週間で致死となることがわかっていました。本研究では、その原因を調べるため、誕生直後のKOマウス脳の遺伝子発現パターンを網羅的に解析しました。その結果、KOマウスは炎症関連遺伝子の増加など、既存の脳内炎症モデルと類似したパターンを示しました。さらに、KOマウス脳ではグリア細胞のアストロサイトやミクログリアの異常増加も認められ、これらは炎症シグナルを介していることが示唆されました。今後、KOマウスが脳の炎症と発達の関係を知る有用なモデルとなることが期待されます。