がん免疫療法の副作用である乾癬様皮膚炎の発症メカニズムを解明 〜通常の乾癬とは異なる治療標的の発見〜

がんの治療に、抗Programmed cell death(PD)-1抗体をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬が登場し、これまでにない良好な成績を挙げています。一方で、これらのがん免疫療法では、免疫が活性化することによって副作用が生じます。特に皮膚ではその発症頻度が高く、がん治療の妨げになります。

本研究では、皮膚の免疫関連副作用の一つである乾癬様皮膚炎に着目しました。その結果、抗PD-1抗体投与中に乾癬様皮膚炎を発症した場合、その皮疹において表皮へのCD8 T細胞(免疫を活性化する細胞)浸潤が通常の乾癬症例より多く、かつ血液中で、炎症を促進するサイトカインの一つであるインターロイキン(IL)-6が上昇していることが分かりました。また、乾癬様皮膚炎マウスモデルを解析すると、PD-1シグナルを欠くマウスでは、ヒトと同様、表皮CD8 T細胞浸潤が目立ち、皮膚炎も悪化していました。CD8 T細胞上のみでPD-1シグナルを欠く、特殊なマウスでも同様に、皮膚炎は悪化します。これらのPD-1シグナル阻害下での乾癬様皮膚炎は、野生型マウスの乾癬様皮膚炎には無効である抗IL-6受容体抗体で治療することができました。

この結果は、PD-1阻害療法下での乾癬様皮膚炎は、特にCD8 T細胞上のPD-1が阻害されることによって惹起されていること、通常の乾癬と異なり、IL-6標的療法が、この免疫関連副作用の皮膚炎の特異的治療法となり得ることを示しています。本研究では、特に乾癬様皮膚炎を取り上げていますが、他の重要臓器における免疫関連副作用にも応用できる結果と考えられ、免疫関連副作用の制御により、さらに良いがん免疫療法の施行に結び付けることを目指しています。