選手がアイマスクを付けてプレーするブラインドサッカーでは、転がると音が鳴るボールが用いられます。選手はその音を頼りに、刻々と変化するボールの位置を判断しています。しかし、選手がどのようにしてボールの位置を判断しているのか、具体的なことはよく分かっていませんでした。
これまでの研究では、頭部を動かし、より顔の正面で音を聴くことで、音源の位置がより正確に判断できることが報告されています。そこで本研究では、ブラインドサッカー選手が、転がってくるボールを足でトラップする際に、頭部をどのように回転させているかを調べました。トラップとは、近づいてきたボールを受け止め、次の動きを行いやすい位置に移動させることです。
その結果、ブラインドサッカー選手は、ブラインドサッカー経験のないアイマスクを付けた晴眼者よりトラップの精度が高く、トラップの瞬間に頭部が晴眼者より下を向いていることが分かりました。さらに、ボールが投射された時点を基準とした頭部角度の下向きの変化は、ボールが投射された直後からボールトラップの瞬間まで、晴眼者と比較して一貫して大きいことが分かりました。
以上の結果から、ブラインドサッカー選手は、近づいてくるボールを的確にトラップする際に、晴眼者より大きな下向きの頭部回転を用い、早い段階から頭部をボール方向に向けることで、音の位置をより正確に判断していることが示唆されました。
本研究の結果は、ブラインドサッカーのプレーにおいては頭部の動きが重要な役割を果たしている可能性を示しており、ブラインドサッカーのように音を聴いて動きへつなげることが重要なスポーツにおける知覚―運動技能の効果的な練習方法の開発へと応用が期待されます。