2014/04/08
研究成果のポイント
1. 溶液中からセシウム(Cs)を高度に除去する能力を持つ微細藻類(コード名nak 9)を発見しました。
2. nak 9は真正眼点藻綱に属する新種で、培地に添加した放射性の137Csを、2日以内に90%以上吸収・除去する能力を有していることを明らかにしました。
3. 本藻の発見は、福島第一原子力発電所の事故で拡散した放射性物質の低コスト、省エネルギー、低環境負荷の回収・除染技術(藻類を利用するファイトリメディエーション技術)の開発につながり、汚染地域の早期の復旧・復興に貢献しうるものです。
研究の概要
筑波大学生命環境系の白岩善博教授および井上勲教授らの研究グループは、被災地の除染に用いることのできる微細藻類や水生植物の探索を行いました。探索にあたっては、福島第一発電所から環境に拡散した放射性物質の内、特に人体に吸収されやすいCs、ストロンチウム(Sr)およびヨウ素(I)について、それらを高度に吸収する株に注目しました。井上教授らの研究グループが有する微細藻類に加えて(独)国立環境研究所微生物系統保存施設等から取得した188株を、白岩教授らの研究グループが137Cs、90Srあるいは125Iを添加した培地で培養し、その吸収能力を検定しました。その結果、Cs、SrおよびIを高度に吸収する株それぞれ5株,3株および8株を見い出しました。特に、nak 9は培地中のCsを2日以内に90%以上吸収・除去するなど高いCs吸収能力を有していることから、白岩教授らは、本藻を用いた低コスト、省エネルギー、低環境負荷の除染技術を開発し、汚染地域の早期の復旧・復興に貢献できればと考えています。
*本研究は、筑波大学が助成する東日本大震災復興・再生支援プログラム(平成24年~25年)および内閣府が助成する科学技術戦略推進費「重要政策課題への機動的対応の推進」、農地土壌等における放射性物質除去技術の開発(平成23年度)によって実施されました。
掲載論文
【題 名】 Global searches for microalgae and aquatic plants that can eliminate radioactive cesium, iodine and strontium from the radio-polluted aquatic environment: a bioremediation strategy
(放射能汚染水から放射性セシウム,ヨウ素およびストロンチウムを除去する能力が高い微細藻類と水生植物の探索:バイオレメディエーション戦略に向けて)
【著者名】 Shin-ya Fukuda, Koji Iwamoto, Mika Atsumi, Akiko Yokoyama, Takeshi Nakayama, Ken-ichiro Ishida, Isao Inouye, Yoshihiro Shiraiwa (福田真也、岩本浩二、熱海美香、横山亜紀子、中山剛、石田健一郎、井上勲、白岩善博)
【掲載誌】 Journal of Plant Research 127:79–89, 2014
【掲載日】 2014年1月9日
白岩善博 教授