光が引き起こす励起子の超高速ダイナミクスの機構を解明

代表者 : 佐藤 駿丞  

半導体や絶縁体などの固体物質の中では、負の電荷を持つ電子と正の電荷を持つ正孔が互いの引力によって結びつき束縛された励起子と呼ばれる状態が生成されることがあります。本研究では、アト秒(10の18乗分の1秒)時間分解ポンプ・プローブ分光実験をフッ化マグネシウム(MgF2)単結晶に適用し、光が引き起こす励起子の超高速なダイナミクスを高い時間分解能で観測することに成功しました。

これにより、光が誘起する励起子のダイナミクスには二つの時間スケールの現象が共存していることが明らかとなりました。一つは励起子ダイナミクスを駆動する光の周期よりも長い時間スケールで生じる現象で、もう一つは光の周期よりも短い時間スケールの現象です。

微視的な数値シミュレーションにより解析を進めたところ、励起子は、長い時間スケールでみると、電子と正孔が結びついた「原子」のような振る舞いを示す一方、短い時間スケールにおいては、電子と正孔がそれぞれ空間内を自由に移動する「固体物質」的に振る舞うことが分かりました。

本研究で明らかとなった、超高速励起子ダイナミクスにおける励起子の二面性(原子的性質と固体的性質の共存)は、励起子を光制御することで物質の様々な性質を得るための、新しい方法論の可能性を示唆しています。