マウス胎仔の血液を他種のものに置き換えることに成功

代表者 : 濱田 理人  

実験動物を用いた造血幹細胞移植は、さまざまな疾患に対する有効な治療法の開発や血液系の研究において重要な研究手法であると同時に、造血幹細胞の機能を確かめる強力な検証法の一つです。従来の造血幹細胞移植モデルは、レシピエント(移植される側)の免疫細胞を抑制し、移植するドナー造血幹細胞の拒絶反応を避けるため、あらかじめ放射線照射などの処置によって骨髄中の造血幹細胞を死滅させたマウスの静脈に、ドナー由来の造血幹細胞を注入させて作製しています。しかし、この処置は、レシピエントの寿命を短縮し、ドナー細胞の生着率を低下させる恐れがありました。また胎仔をレシピエントにして、造血幹細胞の高い生着率を得る方法は未だ報告されていません。

本研究では、生まれつき造血幹細胞が産生できない遺伝子改変マウスを作成し、移植前の処置を行わずに、ドナー由来の造血幹細胞を高い割合で生着させることに成功しました。この造血幹細胞は、自己複製能や増殖能も有しています。また、同様の方法により、種の異なるラットの造血幹細胞を、マウス胎仔に生着させることも可能です。

本研究で提案する移植法は、有効な異種細胞移植モデルになり得るものであり、今後、ヒト造血幹細胞を用いたヒト化マウスの作製に貢献できる可能性が示唆され、ヒト抗体の作製や先天性疾患の治療法の研究に役立つことが期待されます。