交通死傷を減らすには交通手段のシフトがカギ

代表者 : 市川 政雄  

人々が利用する交通手段をシフトさせる、例えば主要な交通手段を自家用車から公共交通機関に誘導することにより、交通死傷が減少すると言われています。しかしながら、これについて、国や地域レベルといった大きな人口集団を対象とした実証データは、これまで示されていませんでした。一方、日本の中学生は、自転車通学中の交通死傷リスクが高いことが知られていますが、冬季に多量の降雪があった場合には、自転車の利用が困難になり、通学手段が徒歩、自家用車、公共交通機関など、自転車よりも交通死傷リスクが低い方法にシフトすると考えられます。

 

そこで本研究では、2004年から2013年の月ごとの都道府県別の中学生の通学中の交通死傷(死亡・重傷)データを用いて、自転車通学が困難になる豪雪時の交通死亡・重傷率の変化を分析しました。その結果、豪雪時(月間100 cm以上の降雪時)には交通死亡・重傷率が68%減少しており、交通手段のシフトが、交通死傷を減らす重要な方策となりうることが明らかになりました。

 

本研究は、地域レベルの人口集団を対象に、交通手段のシフトにより交通死傷を予防できることを実証した初めての成果であり、日本のみならず各国の交通政策を立案する上で、有用な情報となることが期待されます。