目的物流動に伴う担保物権の効力の変容 | 直井 義典 | 筑波大学研究者カタログ

代表者 : 直井 義典  

Keyword

担保物権

研究テーマ

  • 目的物流動に伴う担保物権の効力の変容

研究ハイライト

事業を営むにあたって不可欠なのが、他者から資金供給を受けることです。担保物権は、資金提供者が他の債権者に先駆けて貸付金の回収を可能にすることによって、資金提供を行うインセンティブを高めるために有用な手段です。伝統的には不動産に抵当権を設定し、その不動産の競売代金から債権の回収を行ってきましたが、不動産価格が右肩上がりに上昇する時代の終焉とともに、こうした担保実務は変容してきています。すなわち、不動産担保であっても賃料債権などの収益をも勘案して担保価値を評価したり、不動産以外に製品等の動産や売掛金等の債権、あるいは知的財産を担保の目的とすることが行われています。そこでは、流動動産譲渡担保に見られるように担保目的となる財産が変動することが当初から想定されておりなおかつ担保目的の種類が変わらないケースのほか、建物が滅失して保険金請求権に変容したり、製品が売却されて売掛金債権になったりといった、担保目的の種類が変動するケースも存在します。こうした担保目的の変動にも拘わらず担保物権はその効力を維持できるのか、何らかの変容を被るのではないかを研究対象としています。

また、担保物権だけでなく所有物の添付に伴う償金請求権や契約解除による原状回復請求権、不法行為に基づく人身損害に対する損害賠償請求権、信託財産などについて、特に債務者の倒産手続において法的な性質がどのように変容するのかを研究しています。

さらに、担保の実行方法として主として想定されるのは競売ですが、裁判所が関与するために時間・費用の面での負担が大きいことから、担保実行手続の簡便化を図るには流質のように担保の目的を債権者に直接に帰属させる方法も追及されて然るべきものと考えられます。このような競売以外の担保実行方法が、どのような要件の下に認められるのか、明治初期の流質慣行等を資料として検討を加えることも行っています。

研究の応用・展望

  • 不動産・動産・債権に共通の担保公示手法の開発
  • 情報の担保化

文献・知財・作品

  • 直井義典「第9章 質権」道垣内弘人編『新注釈民法(6)』459-555頁, 有斐閣, 2019
  • 直井義典「明治前期大審院判例における質権に関する慣行の位置づけ」筑波ロー・ジャーナル27号161-208頁, 2019
  • 直井義典「損害賠償請求権の実効性確保に向けた制度構築について」河上正二ほか編『人間の尊厳と法の役割』165-184頁, 信山社, 2018
  • 直井義典「注文者による請負契約の任意解除」安永正昭ほか監『債権法改正と民法学Ⅲ 契約(2)』267-297頁, 商事法務, 2018

 

https://orcid.org/0000-0002-7774-4222

20448343

ビジネスサイエンス系

Faculty of Business Sciences

Collaborators: