代表者 : 正田 純一
歯周病はさまざまな全身疾患と関連しており、とりわけ、メタボリック症候群の患者で、高い有病率が見られます。メタボリック症候群は、肝臓においては、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)や非アルコール性脂肪性肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)といった形で現れます。また、身体活動と歯周病の発症には関連性があると考えられていますが、エビデンスには乏しいのが現状です。NAFLDやNASHの一般的な治療法は、食事および運動療法であり、本研究チームはこれまでに、NAFLDやNASH患者について、運動療法後に歯周病菌が減少することを報告しています。そこで本研究では、そのメカニズムを解明するために、運動療法の介入前後の唾液成分の分析と口腔内細菌叢のゲノム解析を実施しました。
歯周病と診断されたNAFLDの中年肥満男性49名を対象に、3か月間の運動療法を実施し、その前後で唾液を収集し、炎症に関わる物質である唾液中の免疫グロブリンA(IgA)、菌体内毒素lipopolysaccharide(LPS)、TNF-α、ラクトフェリンの測定、および、口腔内細菌叢のゲノム解析を行いました。また、中年肥満男性21名を対象に食事療法を実施し、運動療法の効果との比較を行いました。
その結果、運動療法によって、口腔内細菌叢の種多様性が増大すること、また、LPS産生に関わる歯周病菌の菌数とLPS産生能が減少することが分かりました。すなわち、運動療法には、口腔内環境を改善する新しい効果があることが示唆されました。