植物を使った効果的なワクチン生産技術の開発 「つくばシステム」を活用して | 三浦 謙治 | 筑波大学「知」活用プログラム 成果インタビュー

代表者 : 三浦 謙治  

三浦 謙治Miura Kenji

新型コロナウイルスに対するワクチンの開発と製造が、世界で急ピッチに進んでいます。私たちは、これまで培ってきた植物を利用したタンパク質大量生産系「つくばシステム」によって、新型コロナウイルスの遺伝情報から植物にウイルス様粒子(VLP)を作らせることに取り組んでいます。VLPは安全で効果的なワクチンの有力候補です。「つくばシステム」は、このほかにも各種の有用タンパク質を大量かつ安価に作る方法として、実用レベルの物づくりに貢献できるでしょう。

 

植物にタンパク質を大量に作らせる方法

タンパク質を生産するために従来広く使われてきたのは、大腸菌や動物由来の細胞です。これに対して、私たちが開発した植物による生産系「つくばシステム」には、次のような数々の利点があります。

1.複雑な構造やサイズの大きいタンパク質も作れる、2.遺伝子情報の導入が容易である、3.従来の方法の倍速で大量生産ができる、4.培地がいらない、5.生成物の精製が簡単である、6.よく使われるベンサミアナタバコ以外にも、トマトやレタスなど多くの植物で生産できる、7.安価で管理しやすく環境にやさしいなどです。

植物にタンパク質を作らせる試みはこれまでも行われてきましたが、発現量が低く、実用的な収量を得るには至りませんでした。私たちは、植物に感染するジェミニウイルスの複製システムに、転写終結領域であるターミネーターを2つ挿入したベクターを作成し、これを植物に注入するアグロインフィルトレーション法によって、世界最高レベルの高い発現量を短期間で得る技術を開発しました。ベンサミアナタバコの葉の新鮮重量1gあたりおよそ4mgのタンパク質を3日という短期間で得ることができます。

この方法でシラカバ花粉症のアレルゲンを生産して舌下免疫療法に供するなど、医療分野への応用の可能性も広がりつつあります。

 

新型コロナウイルスのワクチンになるVLPを作る

新型コロナウイルスに対する安全性の高いワクチンの十分な量が早期に提供されることが、世界で待たれています。私たちは、「つくばシステム」を活用して、植物に新型コロナウイルスのウイルス様粒子(VLP)ワクチンを作らせることをめざしています。

VLPとは、ウイルスの外殻だけでできている粒子です。ウイルス外殻は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、外被糖タンパク質などからなる大きな複合体です。このため、ワクチンとして投与したとき免疫細胞に認識されやすく、強い抗体産生能をもちます。しかし、ウイルスの遺伝情報は含んでいないので感染リスクがなく、安全で効果的なワクチンになり得ることが知られています。

「つくばシステム」を活用すれば、新型コロナウイルスの遺伝情報に基づいて、VLPのように構造が複雑で大きなタンパク質を作ることが可能です。この方法によって、新型コロナウイルスVLPワクチンを生産する基盤技術力を示したいと考えています。

 

三浦 謙治(筑波大学 生命環境系)
Project Name / 植物を使った効果的なワクチン生産技術開発

(取材・執筆:古郡 悦子 サイテック・コミュニケーションズ / ポートレート撮影・ウェブデザイン:株式会社ゼロ・グラフィックス)

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