サッカーボールの飛翔軌跡は、その空力特性に大きく影響を受けることが知られています。 これまで、サッカーボールのパネル枚数や形状は、12枚の5角形パネルと20枚の6角形パネルを組み合わせた32枚パネルが一般的でした。しかし、近年では14枚パネル、8枚パネル、6枚パネルとパネル枚数が減少していくと共に、複雑なパネル形状が公式球として採用されてきており、その空力特性は32枚パネルボールと異なることが示されています。
本研究では、サッカーのイングランド・プレミアリーグとイタリア・セリエAリーグの2020-21シーズン公式球であるFlight 2020 (Nike Inc.)の基礎的空力特性を風洞実験で計測しました。従来のボールより少ない4枚パネルボールで、かつ複雑なパネル形状と表面(groove)デザインで構成されており、その空力特性は明らかではなかったからです。
他の公式球である6枚パネルボールのTsubasa 2020 (Adidas Inc.)と32枚パネルボールのPelada 2020 (Molten Inc.)の空力特性と比較検討した結果、高速領域(秒速25m超)におけるFlight 2020の空気抵抗は他の公式球よりわずかに大きい一方、低速領域(秒速15m未満)での空気抵抗はより小さくなると考えられました。
また、初速が秒速25 m、初期迎角40度のケースにおけるボールの飛翔距離はFlight 2020が最も小さくなりますが、初速が秒速15 m、初期迎角40度のケースにおけるボールの飛翔距離はFlight2020が最も大きくなると推測されました。
さらに、Flight 2020は無回転時の飛翔の際に発生するブレが他のボールと比較してわずかに小さく、ブレにくいボールであると推測されました。
このようなFlight 2020の空力特性は、ボール表面の粗さが大きいためであり、その大きな要因として、ボール表面の縫い目や溝の長さや幅が大きいことが関係していると考えられました。
本研究成果は、今後のボールデザインの企画、設計、評価等に活用できると期待されます。