Horizon 2020 研究者インタビュー

代表者 : 矢花 一浩  

光と物質の相互作用をモデリングするために、世界各地の研究者がコンソーシアムをつくり
先進的な理論ネットワークを築く共同プロジェクト。
ヨーロッパの電磁気学の研究者たちが中心となってプロジェクトを企画し、
日本からは筑波大学が参加。
研究者の交流によって電磁気学と量子力学の先進的な研究を融合させ、
これまで不可能だったシミュレーションを可能にすることを目標としています。

 

30年来の知人である研究者に、
参加を誘われる
私が参加したのは、古くからの知人に誘われたのがきっかけ
です。私の知人であるフランスの研究者が、共同プロジェクトを中
心となって立ち上げたメンバーのひとりでした。このプロジェクト
に参加したことで、2019年には合計5人のヨーロッパの研究者が
来日し、それぞれ1ヶ月~3ヶ月もの間滞在しました。毎日のように
私やポスドクたちと議論を交わしましたし、関西光科学研究所で
日本国内の光と物質の相互作用に関する研究者を集めたワーク
ショップを開催することもでき、大変実りのある時間を過ごせた
と思います。私のヨーロッパ滞在は新型コロナウイルスの影響
で延期となっていますが、すでに私の研究室のポスドクが渡欧
して国際会議で講演をするなど、交流を深めることができてい
ます。

 

専門領域が異なる研究者との
ネットワークが大きく広がった
この共同プロジェクトは光科学に対する電磁気学と量子力学の
先進研究を融合させるものであり、参加者の多くは電磁気学を専
門としてきた研究者です。私は量子力学をメインとしてきた研究者
のため、これまで知り合うことのなかった多くの研究者とのネット
ワークを築けました。異なる分野の研究者が共同で進めるプロ
ジェクトなので、お互いの研究内容を理解するところからのスタ
ートですが、私が研究しているスーパーコンピューターを使った光
・電子ダイナミクスの第一原理計算や、その研究を通じて開発した
オープンソースの光科学計算プログラム※にも多くの研究者が強
い興味を示してくれています。長い時間をかけてディスカッショ
ンすることで共同研究のテーマを探れますし、すでにこのプロジ
ェクトを通して知り合い来日した研究者との共同論文もひとつ仕
上げています。
※第一原理電子ダイナミクス計算に基づく光科学計算の新しいソフトウェア「SALMON」
(https://salmon-tddft.jp)
日本の研究者が苦手としている
国際的なネットワークづくりが可能に
昨今は、海外の論文数が増えている一方で日本の論文数が減っ
ていることが問題視されていますが、これは日本の研究者が国際
的なネットワークを築けていないことが原因のひとつだと私は
思います。海外の研究者は幅広くネットワークを築き、共著で多く
の論文を書いているのです。今回私が参加したのはモビリティを
支援するMSCAのRISEという制度で、共同研究のための研究者た
ちの短期交流を支援するものです。国際的なネットワーク作りを
他国は重視しており、それを体感する事ができる非常に有意義な
プロジェクトだと感じます。海外の研究者と交流したいとお考えの
方は、ぜひ参加を検討してみてください。