自閉スペクトラム症で他者視点の取得が難しいのはなぜか ~そのメカニズムの一端を解明~

代表者 : 井澤 淳  

2021.08.06

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院情報学研究科(研究当時:自治医科大学)の平井 真洋 准教授、立命館大学理工学部(研究当時:自治医科大学)の櫻田 武 助教、国立大学法人筑波大学システム情報系の井澤 淳 准教授、自治医科大学小児科学の池田 尚広 講師、門田 行史 准教授及び山形 崇倫 教授、国際医療福祉リハビリテーションセンターの下泉 秀夫 教授からなる研究チームは、自閉スペクトラム症児ならびに定型発達児を対象に研究を実施し、自閉スペクトラム症児は、ターゲットへ手を伸ばす動作を行う際に、他者視点の映像の影響を受けにくいことを発見しました。
本研究では、自分とは異なる視点(他者視点)の映像を提示した上で、画面上に提示されたターゲットへ「リーチング運動」する課題を実施し、ターゲットへどの程度正確に手を伸ばせるかを評価しました。結果、定型発達児は、他者視点映像に影響を受けた行動が見られましたが、自閉スペクトラム症児は、他者視点映像に影響を受けることなく、正確にターゲットに手を伸ばすことが可能であったことを明らかにしました。本研究成果は、自閉スペクトラム症児が不得手とされる「他者視点取得(他人の視点の理解)」のメカニズムの解明につながることが期待されます。
本研究成果は、2021 年8 月5 日18 時(日本時間)付国際雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は日本学術振興会科研費・挑戦的萌芽研究「他者視点取得養成ギブスの構築とその応用」、基盤研究B「社会的認知発達における遺伝環境要因の解明:日英ウィリアムス症候群・自閉症比較研究」、新学術領域研究構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解「身体に根ざした他者視点取得能力の神経機構とその障害」の支援のもとで行われたものです。