尿糖から安定して出力する自己発電型バイオ燃料電池の開発に成功~尿糖センシング技術として、糖尿病の予防と介護負担の軽減に期待~

代表者 : 辻村 清也  

2021 年8 月23 日

  • 紙を基材とした小型で軽量かつ尿糖から自己発電できる、環境負荷の低いバイオ燃料電池を作製することに成功しました。
  • 作製したバイオ燃料電池を無線発信機と接続することで、尿糖を検出するバイオセンサとして応用できることを実証しました。
  • おむつに設置して使用することで、患者の尿糖の早期発見および糖尿病の早期治療、また介護者のおむつ交換作業などの負担軽減につながると期待されます。

 

東京理科大学理工学部先端化学科の四反田功准教授、板垣昌幸教授、同大学大学院理工学研究科先端化学専攻の藤村優輝氏(2019 年度博士前期課程修了)、筑波大学数理物質系物質工学域の辻村清也准教授らの研究グループは、紙を基材とした非常に薄くて軽く、尿糖から自己発電可能なバイオ燃料電池を開発することに成功しました。また、この燃料電池は尿糖濃度に応じた出力密度を示すため、無線発信機と接続することで、尿糖濃度を測定するバイオセンサとしても活用できることを明らかにしました。将来的には、おむつに設置して使用することで、患者の尿の有無や尿糖を随時モニタリングできる尿糖センシング技術の開発につながることが期待されます。

血糖値を間接的にモニタリングするための自己発電型バイオセンサについては、今までに広く研究されてきました。例えば、唾液中の糖を検出するものやコンタクトレンズ型で涙中の糖を検出するものなどが挙げられます。本研究グループは、尿糖が血糖値と密接に関係していること、尿糖の検出には血液検査ほどの手間が掛からないこと、食後高血糖などの一時的な血糖値の変化も追跡できることなどの理由から、尿糖を検出する自己発電型バイオセンサに注目し、実際にその開発に取り組みました。研究を進めた結果、紙を基材とし、繰り返し使用しても尿糖から安定的に出力を得られるバイオ燃料電池と、それを応用した尿糖センシング・デバイスを開発することができました。このデバイスはバイオ燃料電池と無線発信機から構成されており、尿糖を検出するとバイオ燃料電池が発電し、無線発信機で蓄電され、一定量で電波を発信する機構を有しています。有機物のみで構成されることから、環境負荷が低いことも特長です。発信された電波の周波数を尿糖濃度に換算することで、簡易的に尿糖濃度を測定でき、随時計測により、尿糖の経時変化を追跡することも可能です。発信された電波はスマートフォンなどの外部機器で受信できるので、おむつのチェックなどの介護者の作業を大幅に減少させることができます。
本研究成果は、2021 年7 月15 日に国際学術雑誌「ACS Sensors」にオンライン掲載されました。