代表者 : 石賀 康博
2021.09.07
世界の農業現場では、植物病原菌の感染が原因の病気により、安定的な作物生産が脅かされています。その中でもダイズの生産現場では、ダイズさび病菌の感染により、多額の経済的損失が生じています。主な防除手段は殺菌剤の散布ですが、環境汚染や経済負担などさまざまな問題があり、持続可能な農業の実現につながる新たな防除方法の開発が求められています。
本研究では、植物由来のバイオマス素材であるセルロースナノファイバー(CNF)をダイズさび病の病害管理に応用することを検討しました。0.1%のCNFをスプレーで噴霧し、葉全体をCNFで覆ったダイズ葉では、ダイズさび病菌接種後の病斑数が無処理葉に比べて約50%減少しました。このことから、ダイズ葉をCNFで覆うとダイズさび病への耐性が付与されることが分かりました。更に解析を進めたところ、CNFで覆ったダイズ葉では、表面特性が疎水性から親水性に変化していました。また、ダイズさび病菌が植物表面から侵入する際に必要な感染器官である付着器の形成に関連する酵素をコードする遺伝子の発現が、無処理葉に比べて有意に抑制されることが、明らかになりました。
これらの結果から、CNFは、ダイズ葉の表面を親水性へ変化させることでダイズさび病菌が本来認識するはずの疎水性をカモフラージュし、ダイズさび病菌に対する抵抗性を付与することができたと考えられます。
本研究は、植物病原菌よる病害の防除にCNFを適用した世界初の研究になります。